朗読ボランティア 「杜の音通信」 (H29年8月号)

  
長野淳子 [posted:2017.08.25]

平成26年の9月から、月1回のペースで朗読ボランティアに伺っている 「ギャラリー杜の音」
8月は、以下の5作品を朗読しました。


① 川端 誠:作・絵 落語絵本 「たがや」
② たばた せいいち :作・絵 「さっちゃんのまほうのて」
③ 久世 光彦 :作 「触れもせで」~向田邦子との二十年~より 「おしゃれ泥棒」
④ 向田 邦子 :作 「眠る盃」 より 「字のない葉書」
⑤ 矢野 竜広 :作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」


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① 川端 誠:作・絵 落語絵本 「たがや」   (朗読:田中 憲子さん)


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江戸の頃から、隅田川の花火は夏の一大風物詩。両国橋は、すしづめの大混雑、川面も屋形船でいっぱいです。
長屋をあげての花火見物に、ひと月後には赤ん坊が生まれるというたがや夫婦も、出かけていきました。


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花火の音が轟くなか、なんとおかみさんが産気づき・・・
屋形船で繰り出していた大店のご主人さんたちも、橋の上からたらされた帯に、お湯やたらいやお寿司やお酒なんかを下げてやります。


「たが屋さんとは、木をあわせ、まるくおさめるご商売。そのおめでたにあやかりましょう」


夏のこの時期にぴったりの、 「人情噺」 です。


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アメリカでは赤ん坊が産まれると、居合わせた人たちが 「WELCOME!」 と声をかける習慣があるそうですが、
今回は、花火の掛け声 「た~まや~」「た~がや~」 にして、落ちをつけています。


江戸っ子のきっぷの良さと、落語調のテンポの良さを、今回は田中さんが持ち前の明るさで、小気味よく表現してくれました。
杜の音の皆さんも、絵本を見ながら楽しそうに聞いて下さいました。


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② たばた せいいち :作・絵 「さっちゃんのまほうのて」  (朗読:三浦 由子さん)


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さっちゃんは今日、幼稚園のままごと遊びで、とってもお母さんになりたかったのです。
さっちゃんのお母さんのおなかには、じきに生まれてくる赤ちゃんがいます。
お母さんのおなかをそっとなでながら 「さっちゃんもお母さんになる」 と心に決めたのです。
 

そんなさっちゃんに、お友達が言いました。
「さっちゃんはおかあさんにはなれないよ! だって手のないおかあさんなんて変だもん。」


さっちゃんの右手には指がないのです。
さっちゃんは、なぜ自分の右手には指がないのか、お母さんに迫ります。


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この作品は、童話作家である田畑精一さんと
「先天性四肢障害児父母の会」 の野辺明子さん、志沢小夜子さんの共同制作によるものです。
現実として先天性四肢障害に関わっている方々が作ったおはなしには、えもいわれぬ迫力があります。


指のない手を 「不思議な力をくれるまほうの手」 と言ったさっちゃんのお父さん。
その言葉で、さっちゃんは辛い現実を乗り越えるきっかけを得ます。


言葉は本当に不思議な力を持っていて 「まほうの手」 と捉えてその言葉を常に口にすることで、
自分と周囲の認識がポジティブに変わっていくのでしょう。
さっちゃんの元気で力強いキャラクターは、私たちにも元気を与えてくれます。


読んだ後、思いのほかすがすがしい気持ちになれる、子どもに関わる大人の方みんなに読んで欲しい作品です。
今回は、三浦さんが、障害への思いと親娘の会話を、優しい眼差しで読んでくれました。
杜の音の皆さんも、涙ぐみながら聞いて下さいました。


★三浦さんの感想

この絵本は、登場人物の気持ちが胸に迫り、その結末に深い感動を覚えます!


ただ、読むのが難しく、レッスンでは、長野先生が読みをいくつか示して下さいました。
その読みがさすがで、思いがリアルに感じられ、印象的なのです。声は豊かに色々なことを伝えられるものと改めて感じました。
当日は、先生の指導と演出により、少しは臨場感のある朗読になったかと思います。(まだまだ感動させるところまではいきませんが)


私自身、この絵本により、障害について (ほんの少しですが) 理解が出来たような気がしています。
多くの方に読んでいただきたいと思います。


毎回、杜の音の皆さんが真剣に聴いて下さり、育てていただいていると感謝しています。
次回も喜んでいただける作品をお届け出来るよう、作品探しも頑張ります!


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③ 久世 光彦 :作 「触れもせで」~向田邦子との二十年~より 「おしゃれ泥棒」   (朗読:村山 和子さん)


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演出家であり、作家としても見事な作品を残した 久世光彦氏 による、脚本家 向田邦子さん との思い出を綴ったエッセイ。
「触れもせで」 というタイトルが実に意味深です。


遅刻魔―あんなに約束の時間にいい加減な人も珍しかった。
嘘つき―大きな嘘も上手だったが、とりあえずの小細工もうまかった。
泥 棒―どこを探してもあの人からもらったものなど出てきはしない。奪られてばかりいた。

二十年のパートナーなればこその知られざる "向田邦子の素顔" が明かされます。


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「触れもせで」 とのタイトルといい、全編を覆うトーンといい、まるで亡き恋人に捧げた 「恋文」 のようです。
セピア色に包まれたエピソードのひとつひとつを、久世さんが宝物のように慈しんでいる姿が伝わってきます。


向田さんが台湾での不慮の飛行機事故で亡くなってから30年以上の年月が経ち、
久世さんが亡くなってからも数年が経過しました。
お二人とももっと長生きして多くの作品を残して欲しかったというのが偽らざる心境です。


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偶然にも今回伺った8月22日が、向田さんの命日だったこともあり、
「向田さんが大好き」 という村山さんが、思いを込めて読んでくれました。
杜の音の皆さんも、じっくり聞き入って下さいました。


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④ 向田 邦子 :作 「眠る盃」 より 「字のない葉書」   (朗読:長野 淳子)


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1979年に出されたエッセイ集。
タイトルの 「眠る盃」 は、「荒城の月」 の一節 「めぐる盃」 を間違えて覚えてしまったという話からきたもの。


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不器用な父親へのさりげない愛情や、長女らしいしっかりとした性格、女性としてのこだわりなど、
向田さんの人柄が偲ばれるエッセイ。美しくてユーモア溢れる文章が、とても魅力的です。


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今回はその中から、お父さんの手紙・はがきにまつわる思い出を綴った 「字のない葉書」 を、朗読しました。
日々の出来事一つ一つを自分の感性で丁寧に受け止めているから、こんなに美しい文章が書けるのでしょうね。
杜の音の皆さんの中には、涙を拭いながら聞き入って下さる方もいらっしゃいました。


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⑤ 矢野 竜広 作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」 (朗読:全員で)


「太陽がのぼること」 で始まるこの詩は、
「当たり前に思えてしまうこと その一つ一つが 本当は奇跡」 という内容で、
ステージ・アップの朗読会でいつも最後に、参加者全員で読んでいる詩です。


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「杜の音」 でも、いつも結びに全員で、音楽にのせて読みます。
「この詩のコピーを部屋の壁に貼っています」 という方もいて
「毎回この詩を朗読するのが楽しみです」 とおっしゃって下さいました。


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毎回、作品選びに始まって、登場人物の配役やBGMなど、「読む人」 も 「聞く人」 もお互いに楽しめるように、工夫していますが
読んでいる間の 皆さんからの 「笑い声」 や、読み終わった後の 「拍手」 「楽しかった」 の声が 「朗読して良かった~」 と思う瞬間です。
そうした声を励みにして、これからも 「朗読ボランティア」 を続けていきたいと思っています。


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