朗読ボランティア 「杜の音通信」 (令和3年2月号)
平成26年の9月から、月1回のペースで朗読ボランティアに伺っている 「ギャラリー杜の音」
74回目 の令和3年2月は、以下の 4作品 を朗読しました。
① 辻 仁成 : 作 「そこに君がいた」 より 「バレンタインデー大作戦」
② ありよし さわこ : 文 ・ あきの ふく : 絵 「かみながひめ」
③ 倉本 聰 : 作 ・ 黒田 征太郎 : 画 「ニングルの森」 より 「お札」
④ 向田 邦子 : 作 「父の詫び状」 より 「子供たちの夜」
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① 辻 仁成 : 作 「そこに君がいた」 より 「バレンタインデー大作戦」 (朗読 : 野呂 光江さん)
あの頃の僕にとって、毎日は冒険でいっぱいだった。
君と一緒なら世界の果てにだって行けると思ってた。
君と過ごした煌めく時間は、今でも僕の一番の宝物なんだ―。
音楽・文学・映像で、熱い想いを伝え続ける 辻仁成 の心に、今もなお生き続ける輝かしい日々の記憶。
ともに過ごし、いつか離れていった懐かしい友への、苦さを含んだ熱いメッセージを綴った書き下ろし 「青春エッセイ」
今回は、野呂さんが、辻さんの 「バレンタインデー」 に因んだエピソードを、楽しく表現してくれました。
杜の音の皆さんからも、笑い声がこぼれていました。
◆野呂さんの感想
2021年、年が空けて1ヶ月半が経ち、今年初の 「杜の音ボランティア」
伺う日が2月16日で、その2日前がバレンタインデーでしたので、それに因んだ作品は何かないかな?と思い出したのが、
私の大好きな作家、辻 仁成さんの 「そこに君がいた」 より 『バレンタインデー大作戦』
自身の高校時代を振り返りながら、
バレンタインデーなんてものはモテる男にとっては天国だが、自分含むその対極者にしてみれば地獄、「こんな日無くていい!」
しかし、朝は下駄箱にチョコが0だった自分に、放課後マドンナ的女子から意表を突かれチョコが貰えて急に薔薇色に...。
「バレンタインデーとは素晴らしい!!」 と寝返るエッセイ。
ともすると単純なお話なので、途中で飽きられたら... と不安もありましたが、
現金な作者の、滑稽な様子が伝わったのか、笑い声が上がり、よかったです。
私自身は、中学時代に片想いだった男子の机の中にチョコを忍ばせてはみたものの、
実らなかった恋をそっと思い出しました。
いつも一作品朗読する毎に、長野先生がその内容に触れながらして下さるトークも、
皆さんが嬉々として聴き入って下さるので、その様子を眺めるのもとても楽しいものです。
季節感のある作品を読むのは、話題が広がりいいものですね。
いつかこちらで読みたいと思いつつ、なかなか機会が無かった辻さんの本を
今回読む事ができた満足感にも、包まれました。別な機会に再び、辻作品をお届けできたらと思います。 (野呂光江)
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② ありよし さわこ : 文 ・ あきの ふく : 絵 「かみながひめ」 (朗読 : 田中 憲子さん)
和歌山県日高に伝わる民話で、道成寺 の成り立ちに関わるお話です。
海に近い日高の里で、美しい女の子が生まれます。でもいつまでたっても、髪の毛が生えないのです。
悲観した母は、大荒れの海の原因を解決するため、荒れ狂う海に入り、光り物 を持ち帰り、息絶えます。
その光り物は、観音様 でした。
観音様をほこらに祀ると、海は大漁になり、女の子は髪が生え、「かみながひめ」 と呼ばれるようになります。
ある日、その娘の髪の一本をツバメが都までくわえて、藤原不等人 の屋敷に巣をつくりました。
その髪の、長く美しいのに感心した不等人は、娘を探させ養女として迎えます。
やがて、かみながひめは、天皇の妃 となり、聖武天皇の母 になるのです。
この作品の絵は、有名な日本画家、秋野不矩 さん。正統派の凛とした絵の美しさに目を奪われます。
道成寺といえば、「安珍清姫」 の大蛇のお話が有名ですが、
建立にこんな由来があることを知っておきたい、日本の昔話 ですね。
母の娘への愛、その愛に応えるように、信心深いかみなが姫を
今回は、田中さんが情感たっぷりに語ってくれました。杜の音の皆さんも、しっかりと聞いて下さいました。
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③ 倉本 聰 : 作 ・ 黒田 征太郎 : 画 「ニングルの森」 より 「お札」 (朗読:長野 淳子・田中憲子・野呂光江)
「ニングルの森」 は、ドラマ 「北の国から」 などの脚本でおなじみの、倉本聰さん が書いた童話で、
主人公は、山奥にそっと棲んでいる、体長わずか十数センチの先住民 「ニングル」
倉本さんは、この作品の 「あとがき」 の中で、次のように書いています。
「本当は、ニングルのことを公の場でしゃべるべきではないのです。
それは、ニングルとの付き合いにおいて、いわば禁止事項ともいえる事柄なのです。
じゃあ、なぜその掟を破るかたちで、僕がニングルの暮らしの様々を公にしてしまったかというと、
人の暮らしがどんどん異常な方向へ進行してしまって、人間そのものが自分たちの生き方を、
その中心にある座標軸を、見失ってしまったように思えるからなのです」
今回は、「お札」 の使い方をめぐるニングルたちの様子を、野呂さんと、長野と、田中さんの3人で紹介しました。
朗読後、杜の音の皆さんから 「座敷童みたいだね!」 という声が上がり、ひとしきり 「座敷童」 の話に花が咲きました。
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④ 向田 邦子 : 作 「父の詫び状」 より 「子供たちの夜」 (朗読 :長野 淳子)
宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞...
だれの胸の中にもある 「父のいる懐かしい家庭の息遣い」 を、
ユーモアを交じえて見事に描き出したエッセイ集。
クスッと笑って、ウンウンと頷いて、ほろっと泣ける。
家族関係が希薄になってきている今の時代にこそ読みたい作品です。
これほど読む者を惹きつける向田さんの文章力は、やはり凄いのひと言に尽きます。
向田ファンが皆思うことですが、もっともっと長生きしてほしかった!!
自分の子供の頃を思い出します。
今の時代では珍しい厳格な父親と娘の織り成すエピソードに、親子の愛情が垣間見えほのぼのとさせられます。
杜の音の皆さんは、向田さんと同世代の方が多いので、いつも熱心に耳を傾けて下さいます。
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毎回、作品選びに始まって、登場人物の配役やBGMなど、「読む人」 も 「聞く人」 もお互いに楽しめるように、工夫していますが
読んでいる間の 皆さんからの 「笑い声」 や、読み終わった後の 「拍手」 「楽しかった」 の声が 「朗読して良かった~」 と思う瞬間です。
そうした声を励みにして、これからも 「朗読ボランティア」 を続けていきたいと思っています。
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