朗読ボランティア 「杜の音」 通信 (H28年1月号)

  
朗読メンバーブログ [posted:2016.01.20]


一昨年の9月から、月1回のペースで朗読ボランティアに伺っている 「ギャラリー杜の音」
1月は大雪警報が出された18日㈪、26名の方が聞きにきて下さり、以下の5作品を朗読しました。


杜の音 28年1月 雪景色.jpg


① 吉野  弘 作 「詩集 幻・方法」 より 「夕焼け」
② 夏目 漱石 作 「永日小品」 より 「泥棒」
③ 小野 和子 作 「東北民話シリーズ」 より 「ホラくらべ」
④ 向田 邦子 作 「霊長類ヒト科動物図鑑」 より 「安全ピン」
⑤ 矢野 竜広 作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」


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① 吉野  弘 作 「夕焼け」 (朗読:八幡靖子さん)


夫婦として新たな旅立ちをする新郎新婦に贈った詩 「祝婚歌」 でおなじみの吉野弘さん。
この 「夕焼け」 は、電車の中で何度もお年寄りに席を譲るひとりの 「娘」 の様子を、
窓の外に広がる夕焼けの美しさと共に綴っています。


日々の暮らしの中で出会う人間に対する、吉野さんの温かい想いを、八幡さんが朗読してくれました。
この1月で吉野さんが亡くなって3回忌にあたるということもあり、想いの深い朗読になりました。


杜の音 28年1月 八幡さん.jpg


巷では、席を譲った中学生がその老人に罵倒されるという、胸の痛む出来事が新聞を賑わしたばかり。
近頃は、年寄扱いされることに抵抗を示す 「元気なお年寄り」 も多いようですが、
人の好意を素直に受け取る 「心のゆとり」 は、いくつになっても無くさずに持っていたいと思います。

② 夏目 漱石 作 「泥棒」 (朗読:髙橋恭子さん)


『吾輩は猫である』 『坊ちゃん』 『三四郎』 などの作品で広く知られる、明治~大正時代の文豪 「夏目漱石」
『泥棒』 は 『永日小品』 に納められた短編ですが、とても面白い内容です。


話はタイトルで示されるように、夏目漱石の家に 「泥棒」 が入った話。
そこに登場する 「泥棒」 は、「人間」 だけでなく 「鼠」 もいます。
漱石の家は、2日連続で部外者からの損害を被るのです。


夏目漱石は、神経質な人だったと言われていますが、その漱石が唯一敵わなかったのが 「鏡子夫人」
鏡子夫人は 「良妻賢母」 が全盛の当時にすれば、典型的な 「悪妻」 といわれていますが、
その鏡子夫人とのやり取りが、実に面白い作品です。
今回は 「純文学」 を得意とする高橋恭子さんが、一人読みをしてくれました。


杜の音 28年1月 髙橋さん.jpg

③ 小野 和子 作 「ホラくらべ」  (朗読:木村淳子さん)


どれだけ面白い 「ホラ」 が吹けるかを競う 「ホラ吹き大会」 のお話。

●自分の 「おなら」 で起こった雪崩に巻き込まれた男が 「おなら」 の勢いで雪の中から脱出する話。
●野次馬が、寒さで凍った 「火事の炎」 を家に持ち帰ったら、後から解けて家が火事になった話。
●雪に閉ざされた地域で、竹をくりぬいて電話代わりにしていた話。

折しも当日は大雪で、白銀の世界になっていて、ぴったりの内容でした。
今回は、ベテランの木村淳子さんが、落語的な楽しさで読んでくれました。


杜の音 28年1月 木村さん.jpg


小野和子さんの 「東北民話シリーズ」 には、
涙をこぼしながら笑えるおもしろい話、おそろしい結末にゾクっとしてしまうおっかない話、
いろんな動物が出てくる動物たちの話、ほんとかなと興味がそそられるふしぎな話まで、
民話42話が収録されています。どのお話も長い年月をかけて語り手さんから送られてきたもので、
読みおえた後に不思議と心がほんわりと温まる、これからも大切に残し続けていきたいお話ばかりです。


④ 向田 邦子 作 「安全ピン」 (朗読:長野淳子)


「安全運転」 「安全地帯」 「安全ピン」 「安全カミソリ」
私たちは 「安全」 という字がくっついていると、もうそれだけで安心してしまって、つい気が緩んでしまう。
これで大丈夫だと安心をしてしまう。


「安全」 という字はどこかうさん臭い。その分だけ危ないという気がする。
どうも私は 「安全」 という字をうたがっている。信用していない。
この二字がつくとかえって警戒して、気をつけなくてはいけないぞと気持ちも手も身構えて用心している。
「安全保障条約」 を結んでも、絶対安全ではないのだ。


向田さんが亡くなって30年以上経ちますが、まるで現代のことを書かれているようで、
思わずドキッとしてしまいます。
お元気でいらしたら、今の日本の様子を見て向田さんはどんなことを言ったでしょう。
聞いてみたい気がします。

⑤ 矢野 竜広 作 「当たり前のこと」 (朗読:全員で)


「太陽がのぼること」 で始まるこの詩は、「当たり前に思えるひとつひとつのことは、本当は奇跡」
という内容で、ステージ・アップの朗読会でいつも最後に、参加者全員で読んでいる詩です。

「杜の音」 でも、いつも結びに全員で、音楽にのせて読みます。
「この詩のコピーを部屋の壁に貼っています」 という方もいて、
「毎回この詩を朗読するのが楽しみです」 とおっしゃって下さいました。


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毎回、作品選びに始まって、登場人物の配役やBGMなど、
「読む人」 も 「聞く人」 もお互いに楽しめるように、工夫していますが
読んでいる間の 皆さんからの 「笑い声」 や、読み終わった後の 「拍手」
「楽しかった」 の声が 「朗読して良かった~」 と思う瞬間です。
そうした声を励みにして、これからも 「朗読ボランティア」 を続けていきたいと思っています。


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