「今年も ステキなブーケになりました!」 (長野淳子)

  
朗読メンバーブログ [posted:2017.12.23]

12月3日㈰ ステージ・アップ 主催の朗読会 
ライブリーディング vol.6 「ブーケ」  ~言葉を心の窓にして~ を上演しました。


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今回は、私が主宰するグループ 『ステージ・アップ』 の朗読メンバーと、
私が講師を務めている リビング仙台の 『大人のための朗読講座』 の受講生が一堂に会し、
童話・エッセイ・短編小説・ショートショート・詩など、様々な作品をお届けしました。


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出演者全員で気合を入れて、今年は、定刻ドアオープン。
毎年お越し下さる、常連のお客様もいらっしゃいます。嬉しい限りです。


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いよいよ本番スタート。
司会は、今年も及川満奈美さんです。彼女の司会はあたたかさがあって、いつも好評です!


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今回私が朗読した作品は、向田邦子 作 「父の詫び状」 より 「子供たちの夜」
向田さんの子供の頃の 「夜の記憶」 が、様々な光景として浮かび上がります。


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宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞...
だれの胸の中にもある 「父のいる懐かしい家庭の息遣い」 を、ユーモアを交じえて見事に描き出したエッセイです。


今の時代では珍しい厳格な父親と娘の織り成すエピソードに、親子の愛情が垣間見えほのぼのとさせられます。
家族関係が希薄になってきている今の時代にこそ読みたい作品です。


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「子供の頃はよく夜中に起こされた。父が宴会から折詰を持って帰ってくるのである」
「宴席で手をつけなかった口取りや二の膳の物を詰めてくるのだろうが、今考えてもなかなか豪勢なものだった」
「鯛の尾頭つきをまん中にして、かまぼこ、きんとん、海老の鬼がら焼や緑色の羊羹まで入っていた」


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この光景は、まさしく小さい頃の 「我が家の光景」 そのものです。
ちなみに、我が家の折詰に入っていたのは、「緑色の羊羹」 ではなく 「緑色の寒天」 でした。


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私の父はお酒に弱く、おちょこ一杯で真っ赤になる人でした。
ある夜、折詰をぶら下げてご機嫌で帰ってきて、「晴~れた空~」 と、岡 晴夫の 「憧れのハワイ航路」 を歌ったことがありました。


父は普段から、寡黙で穏やかな人で、背中の大きい人でした。
人前で歌を歌うなどめったになく、その父が大声で楽しそうに歌ったのですから、家族はびっくり。


仕事がうまくいったのか、昇進祝いでもあったのか、小さかった私にはわかりませんでしたが、
何か嬉しいことがあったのだということは、子供心にもわかりました。
父の歌声を聞いたのは、後にも先にもあれ一回きりです。


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「夜中に起こされる時の子供たちのいでたちというのが、全員パジャマの上に毛糸の腹巻なのである」


我が家でも 「パジャマの上に毛糸の腹巻」 でした。それも子供たちだけではなく、家族全員でした。
そしてやはり冬の夜は 「湯タンポ」 でした。


「湯たんぽは、古くなった湯上りタオルで包み、丁寧に紐でゆわえるのである」
「湯たんぽは翌朝までホカホカとあたたかかった」
「夜が更けるとどの家もシーンとしていた。飛んでくる蚊も、音はハッキリ聞こえた」


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どれもがみな、私自身の子供の頃の記憶と重なり、10年前に亡くなった父を思い出しながら、懐かしい想いで読みました。
会場の皆さんも、同世代の方が多かったようで、笑いながら頷き、そしてそっと目頭を押さえながら聞き入って下さいました。


これほど読む者を惹きつける向田さんの文章力は、やはり凄いのひと言に尽きます。
今の世の中を見たら、向田さんは何と言っただろう・・・元気でいらしたら、どんな作品を書かれただろう・・・そんなことを思います。
向田ファンの誰もが皆思うことですが、もっともっと長く生きてほしかった!!


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直木賞を受賞した翌年、51歳でこの世を去った向田さん。
気が付けば向田さんが亡くなった歳を、私はすでに過ぎてしまいました。


作家の沢木耕太郎氏は 「向田邦子は 記憶を読む職人であるかのようだ」 と言っています。
作品の中の記憶のひとつひとつが、読む人の記憶に重なる。
そんなところが、多くの人が 向田作品に惹きつけられる 大きな理由かもしれません。


エッセイストの山本夏彦氏は 「向田邦子は突然あらわれて ほとんど名人である」
「一度読んでも 又読みたくなる。そして又読んだ時も 全く新しく読む気がする」 と言っています。


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平成29年で没後36年になりますが、彼女の作品は 年月を感じさせることなく、ついこの間書かれたような気がします。
いつの時代も、誰の心の中にもありそうな 「想い」 を 「温かい目線」 で、そして時に 「鋭い目線」 で描く。
そんなところにも 私は強く魅かれます。


残念ながら、向田さんの新しい作品はもう発表されることはありません。
ならばせめて今ある向田作品を、1人でも多くの人に読み伝えていきたい。私はそう思っています。


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朗読会のフィナーレは、今回も
矢野 竜広 作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」


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「太陽がのぼること~」 で始まるこの詩は、「当たり前に思えてしまうこと その一つ一つが 本当は奇跡」 という内容で、
ステージ・アップの朗読会や、朗読ボランティアなどでいつも最後に、参加者全員で読んでいる詩です。


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今年も、全員で声を合わせて読みました。


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この詩は、2011年のあの震災を経験した私たちにとって、何度読んでも胸に迫るものがあり、私自身途中声が詰まってしまいました。


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会場の全員の方と声を合わせて読んだ時、全員の心が一つになったように思いました。


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出演者それぞれに、持ち味を余すところなく発揮して、みんなすてきに輝いてくれました。
今年も、すてきなブーケになりました。


当日は、学生時代の友人や、朗読講座の受講生など、たくさんのお客様がお越しくださり、
終演後のロビーはそれはそれは賑やかでした。


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私のこだわりに音を上げることなく、ついてきてくれた出演者、縁の下で支えてくれたスタツフの皆さん、
そして何より、最後まで温かい眼差しで見守って下さったお客様、
全員の方に心から感謝を伝えたいと思います。本当にありがとうございました。


皆様から頂いた 「言葉」 を糧に、これからも文字に命を吹き込みながら、
「言葉を心の窓にして」 様々な作品を伝えていきたいと思います。


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お越し頂いたお客様の感想は、こちら
http://www.stage-up.info/voice/cat25/vol29123.html