雛祭りのお茶会で 「雛」 を朗読しました。 (長野淳子)

  
朗読メンバーブログ [posted:2013.03.04]

3月2日㈯ 「お雛祭りのお茶会」 で、芥川龍之介の 「雛」 を朗読しました。


「お雛祭りのお茶会」 が催されたのは、ステージ・アップのメンバー、早坂ふくこさんのご自宅。
早坂さんは、昨年秋からステージ・アップのメンバーとして、朗読会に参加して下さっている方で、
茶道歴は30年以上。裏千家 「早坂宗久」 の御名前をお持ちで、
これまでも、ご自宅のお茶室で 「お茶とお琴と朗読の会」 などを催されています。


今回お招きに与かったのは、私を含めステージ・アップのメンバー5人と、
メンバーの小学校1年生の可愛らしいお嬢ちゃん。


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なんとこのお嬢ちゃん、親戚にお茶をなさる方がいらっしゃるとかで、茶道にとても興味があり、
すでに、野点用のお茶碗をお持ちで、この日も大事そうにご持参でした。


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全員、白い靴下をはいて、お茶室ににじり入ると、
床の間には、小堀卓厳師の色紙 「大願成就」 のお軸


茶釜のお湯が、シュンシュンと温かい音をたてて、
私たちを迎えてくれました。


主菓子.jpg


春らしい主菓子 「春霞」 に、ひとしきり皆で歓声をあげ、
頂いたお茶の御名は 「幾世の昔」  御詰めは 「一保堂」
芝野紫光 御塗の、雲錦蒔絵の大棗に目を見張り、
萩焼・三島・唐津・ばっけ・京焼など、お茶碗の見事さに見惚れました。


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先生が、それぞれの客人に合わせて、お茶碗を選んで下さっていることがわかり、
「亭主のもてなしの心」 を、深く感じ入りました。


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続いてお干菓子を頂いて、今度はひとりひとりお茶を点てさせて頂きました。


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これまでお点前を頂いたことはあっても、自分で点てるのはほとんどが初めての面々。
柄杓遣いや茶筅遣いなど、先生からご教授頂きながら、ひとりひとり順に点てました。


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背筋をぴんと張って、指先にも神経を行き届かせるお作法の一つ一つが、心地よい緊張感になって
全員がお点前を終えた時は、穏やかな達成感で、心が満たされました。


10分少々の休憩の後登場したのは、先生手作りの 「雛茶懐石」


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目にも鮮やかな巻物と、ゆずの香立つ海老真薯に、菜の花があしらわれた椀物、
そして、桜の花の塩漬けが添えられた千枚漬けと、キュウリの香物。
水菓子は、一口頬張ると、春の香りに包まれる大粒のイチゴ。


すべて美味しく頂戴いたしました。


そして、いよいよ朗読の時。


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作品は、雛祭りのこの時期に必ず一度は読む、芥川龍之介の 「雛」
昨年は丸森の 「斎理屋敷」 でも読ませていただきました。


「これは或老女の 話である」 で始まるこの作品は、江戸から明治へと移り変わる時代に、
没落して昔から家に伝わる 「雛」 を手放すことになった御用商人一家のそれぞれの思いを描いた物語で、
老女が、自分の15歳当時のことを思い出しながら語るというスタイルになっていて、
それぞれの家で時を過ごしてきた 「雛」 の前で読むのに、まさしくぴったりの作品です。


今回は45分の作品を、20分に編集しておおくりしましたが、
皆さん身じろぎもせず、じっくりと聞き入って下さいました。


感心したのは、小学校1年生のお嬢ちゃん。
小学校1年生には少し難しいかしらと思いましたが、最後まで実にお行儀よく聞いてくれて、
終わった所で 「面白かった!!」 とにっこり笑ってくれました。


床の間に飾られたお内裏様とお雛様も、じっと耳を傾けてくれているように思いました。


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会の結びに、先生から

「茶道に限らずお稽古事はなんでも、初めは思うようにできなくて難しいと思うこともありますが、
お稽古を重ねていく中で、いつしか身に付き、自然に美しくできるようになるものです。
もちろん日々の研鑽も大事なことですが、何よりも楽しんで続けることが大切なことです」

という言葉を頂きました。


本当に仰るとおりだと、深く頷きながら、こうした一期一会のひと時を頂けたことを心から感謝して 
一同 御いとまをさせて頂きました。


「和の心」 にふれた今年の雛祭りは、ひと際 格別なものになりました。