朗読ボランティア 「杜の音」 通信 (H28年 7月号)

  
朗読メンバーブログ [posted:2016.07.30]

平成26年の9月から、月1回のペースで朗読ボランティアに伺っている 「ギャラリー杜の音」
7月は、以下の5作品を朗読しました。


① 阿川 佐和子 作 「空耳アワワ」 より 「ニセ無口」
② 斎藤 隆介 作 「半日村」
③ 沢村 貞子 作 「私の浅草」 より 「猫年の女房」
④ 向田 邦子 作 「眠る杯」 より 「犬の銀行」
⑤ 矢野 竜広 作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」


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① 阿川 佐和子 作 「空耳アワワ」 より 「ニセ無口」 (朗読:岡部 恵美子さん)


空耳 (2).jpg


この作品は、雑誌 「婦人公論」 に連載されたエッセイをまとめたもので、あとがきに
「女とオバサンとエイジングを基本テーマとして、身の上や近辺に起こったたわいなき事象を取り上げて、
怒ったり笑ったり反省したり、ときにしみじみ考えたりしてみた」
 と、あるように、
どの作品も思わずクスッと笑ってしまうものばかり。


その中から、リビングの講座でいつも楽しい話題を提供してくれる 岡部恵美子さんが、「ニセ無口」 を読んでくれました。


H28年 7月 岡部さん.jpg


「ほとんどの人間は、聞くより話す方が好き」 という臨床心理学の先生の話を引用しながら、
「話したい人間の最たる者」 という阿川さんが、インタビューをするときの苦労話を綴っています。


中でも 「あとがき」 にあった次の言葉が、印象的でした。


「忘却は力なり」

失敗したと思ったことや、ひどい目に遭ったと泣いたことや、後悔すること、
思い出したくもないこと、腹の立つこと、哀しいこと。

マイナスとみなした過去のすべての出来事は、時が経てばいつか必ずプラスに転ずる。
私はできるだけそう信じるようにしている。


この考え方は、まさしく 「陽転思考」「ポジティブシンキング」
阿川さんの原動力は、この辺りにあるようですね!!

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② 斎藤 隆介 作 「半日村」  (朗読:渡部 敦子さん)


半日村.jpg


一日の半分しか、太陽の当たらない 「半日村」
稲の出来は悪く、人々の暮らしは貧しく、でもそれを仕方ないこと、生まれた場所が悪かったと諦めてしまう大人たち。


ところが、一人の少年は違いました。
その日から毎日毎日、山の石を削って、湖に埋めるという行動に出たのです。


周りの人に無理だといわれても、ひたむきに続ける姿に徐々に周りの人間が影響され、
そして、長い長い年月をへて、半日村は 「一日村」 へと変わるのです。


小さな力でも、それを結集し、継続し続けることで大きな成果を得られることを、
決して教訓的でなく教えてくれる作品です。


H28年 7月 渡辺さんの.jpg


作品の面白さもさることながら、滝平 次郎さんの版画がとてもステキなので、
今回は、大きな絵本を皆さんに見て頂きながら、渡部さんが朗読する形をとりました。
耳で聞くだけでなく、目で見ることで、より楽しんで頂けたようです。


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③ 沢村 貞子 作 「私の浅草」 より 「猫年の女房」 (朗読:蓬田 則子さん)


沢村貞子.jpg 私の浅草.jpg


この作品は、浅草の生まれ育った著者が、東京下町の人々の人情あふれる暮らしぶりと、子供たちの生活、
四季折々の町の表情、そして亡き父母、兄弟の思い出を、細やかな筆で綴ったエッセイ集です。


H28  7月 蓬田さん.jpg


今回は、蓬田さんが、「年上女房と年下亭主」 の思いを、江戸っ子らしく朗読してくれました。


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④ 向田 邦子 作  「眠る杯」 より 「犬の銀行」 (朗読:長野 淳子)


眠る杯.jpg


向田さんは、20代の中頃に犬を飼っていたことがあるそうで、
この犬から、色々なことを教えてもらったそうです。
この 「鉄」 という犬は、「犬小屋」 という作品のモデルになっています。


向田さん.jpg


「身分違いと驚かれそうな買い物は、自分への投資」 と言っていた向田さん。
社会人になって、初めてボーナスのほとんどを使って 「ジャンセンの水着」 を買ったり、
脚本家として波に乗ってきたころには、表参道の駅近くにマンションを購入しています。
「お金はきれいに稼ぎ、きれいに使う」 これが、向田さんの 「金銭哲学」 だったようです。


読み終わった後、お客様から

「かつて飼っていた犬のことを思い出して、涙があふれました」
「向田さんの作品は、いつ聞いても胸にせまるものがありますね」

という感想を頂きました。


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⑤ 矢野 竜広 作  「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」 (朗読:全員で)


「太陽がのぼること」 で始まるこの詩は、
「当たり前に思えてしまうこと その一つ一つが 本当は奇跡」 という内容で、
ステージ・アップの朗読会でいつも最後に、参加者全員で読んでいる詩です。


そこに日常があった。.jpg

「杜の音」 でも、いつも結びに全員で、音楽にのせて読みます。
「この詩のコピーを部屋の壁に貼っています」 という方もいて、
「毎回この詩を朗読するのが楽しみです」 とおっしゃって下さいました。

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今回は、リビングの朗読講座から、宮崎幾野さんと、佐藤稔さんが見学で参加しました。

宮崎さんの感想
聞き手の方々がきびしくもあり、あたたかくもあることで
4つの作品それぞれを楽しんでいただけたように感じられました。
作品選びもさることながら、それぞれの読みの個性が、聞く方の好みにはまると
心地よく耳に入っていくのではないかと思います。
また、先生からは 「話すように読む」 の真髄を見せていただいた思いです。
楽しく、また勉強になる会でした。ありがとうございました。

佐藤さんの感想
それぞれの朗読に対して、最初から最後まで熱心に耳を傾け、温かい拍手をおくって頂きました。
読み手の皆さんも落ち着いていて、安心して聞くことができました。
会場のスペースと音の反響具合もちょうど良かったと思いました。
読み手と聞き手が一体になっていると感じました。


H28年 7月.JPG


毎回、作品選びに始まって、登場人物の配役やBGMなど、
「読む人」 も 「聞く人」 もお互いに楽しめるように、工夫していますが
読んでいる間の 皆さんからの 「笑い声」 や、読み終わった後の 「拍手」
「楽しかった」 の声が 「朗読して良かった~」 と思う瞬間です。
そうした声を励みにして、これからも 「朗読ボランティア」 を続けていきたいと思っています。


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