朗読劇 『口紅のとき』 公演ダイジェスト

12月3日㈯ せんだいメディアテーク7階の スタジオシアターにおいて
ステージ・アップ主催の朗読劇 「口紅のとき」 が上演されました。

 
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角田光代 原作のこの作品は、
人生の折々に登場する一本の 「口紅」 を通して、一人の女性の 「生き方」 を描いた 「短編小説」 です。


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この作品は、昨年の朗読会でダイジェスト版を朗読したところ、好評を頂いたもので、
それを受けて今年は、ステージ・アップの朗読メンバー8人で、全編をお届けすることになりました。


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当日はお天気にもお恵まれ、開場30分前からぞくぞくとお客様がお見えになり、受付には長蛇の列。
また、出演者へのお祝いの花束やプレゼントなどが続々と届き、受付けは大わらわ。
まさかの満員御礼で開演時間が押すなど、冷や汗をかくこともありましたが、お陰様で何とか無事に上演することができました。


今日は、当日の模様をダイジェストでご紹介します。

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◆「6歳」のとき (小笠原清子)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/kiyoko/post-80.html    

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私はいつも、鏡に向かって口紅をぬる母の背中を見ていると、
大声で泣き叫びたくなった。

ねえおかあさん、ねえおかあさん、ねえおかあさん、
ねえ、私のおかあさん。


好きなことにもきらいなことにも分類できないもの。
やがてそれが、好きなものよりきらいなものより、
ずっとずっと増えていくことを、六歳の私は まだ知らずにいた。


  • ◆「12歳」のとき (吉田睦美)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-81.html  

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    十二歳の春、祖母が亡くなった。


    父は、祖母の光るベッドにかがみこむようにして、
    祖母のくちびるに紅をぬった。


    さっきまで知らない人に見えた祖母が、
    私のよく知っているおばあちゃんの顔になる。


    私はそのとき、何が起きているのか はじめて理解した。



  • ◆「18歳」のとき (三浦由子)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-82.html

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    卒業式のあと、森下修と学校を抜け出した。
    私たちはなんにも言わず 川べりを歩いた。


    ふいに森下修が立ち止まり、小さな紙袋を取り出す。


    くちべにが一本入っていた。
    桜の色みたいなくちべにだった。


    私はそれを、自分のくちびるにぬった。




  • ◆「29歳」のとき (野呂光江)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-83.html

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    今から私と典洋がはじめるのは、特別なことじゃないんだ。


    真新しいくちべにのような、きらびやかなことを
    私たちははじめるのではない。


    もっとさりげない、もっとなんでもない
    そう、この使い慣れた口紅のようなことを、


    二人ではじめていく。



  • ◆「38歳」のとき (長野淳子)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-88.html

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    かつてほしいと願ったものは、
    とりあえず、今私の手の中にある。


    それでも、手に入れたものばかりでもない。


    そうして私は思い出す。


    かつて、くちべにをぬる母の背中を、
    じっと見つめていた 自分の幼い日を。



  • ◆「47歳」のとき (渡部敦子)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-84.html

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    あの子は 机の前に置いた鏡に 
    顔をくっつけるようにして、くちべにをぬっていた。


    こわれやすいものをなでるみたいに、ゆっくり、そうっと。


    あの子はまだ小さな芽で、これから茎がのび、
    ゆっくり、そうっと、大輪の花が咲く。


    そんな、光に満ちあふれた未来を、かいま見たような気がした。




  • ◆「65歳」のとき (早坂ふく子)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-85.html

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    あの人のお見舞いに行くのに、
    私はかならずくちべにをぬろうと それだけを決めた。


    どんなに忙しくても、どんなに気分がふさいでも、かならず。


    そして、くちべにをぬった口を大きく開けて、
    私は笑ってみせるのだ。


    明日も私たちはいっしょだと、あの人に思い続けてもらうために。



  • ◆「79歳」のとき (八幡靖子)  http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-86.html

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    なんで私が返事をしないかっていうとだね、むかつくからだ、
    ぼけてるわけでもないし、耳が遠くなったわけでもない。


    わからないと言ったら、本当にわからなくなってしまいそうで
    こわいじゃないか。


    皺の一本一本に、しみのひとつひとつに、私の過去がある。
    私の過ごしてきた日々は、すべて私の顔のなかにある。


    その日々を、赤いくちべにが美しく光らせている。



  • 朗読メンバーのブログは、こちら  http://www.stage-up.info/contents/cat9/


    今回は 「朗読劇」 と銘打って、「ひとり語り」 のスタイルをとりましたが、
    出演者それぞれに、持ち前の個性と力を存分に発揮してくれて、お陰様で無事納めることができました。


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    特に今回は、仙台出身のクラシックギタリスト、小関佳宏さんのニューアルバム 「STORY HOUSE」 の曲の数々が、
    それぞれのシーンをとてもステキに、彩ってくれました。


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    公演には、本当にたくさんのお客様にお運び頂き、終演後のロビーはそれはそれは賑やかでした。


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    あらためて、今回の公演にお越し頂いた皆様、たくさんの応援を頂きました皆様、
    私のこだわりに音を上げることなく最後までついてきてくれた出演者、
    そして縁の下で支えてくれたスタッフの方々、その全員の方に心から感謝を伝えたいと思います。


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    皆様から頂いた 「言葉」 を糧に、これからも 文字に命を吹き込みながら
    「言葉を心の窓にして」 様々な作品を伝えていきたいと思います。本当に、ありがとうございました。


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    ◆及川真奈美 http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-87.html
    ◆宮崎幾野・蓬田則子 http://www.stage-up.info/contents/cat9/post-89.html
    ◆お客様からの感想 http://www.stage-up.info/voice/cat25/28123.html

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