『あの日から1年』

3月11日 あの日から1年が経ちます。
あの日のことは、まるで昨日のことのようにはっきりと覚えているのです。


激しい揺れがおさまって、自宅へ車を走らせる途中、

右翼の人が黒い街宣車からマイクを使って、交差点の交通整理をしていたことも

右折ができず、直進と左折だけしているうちに、道に迷ってしまったことも

真っ暗な街中で、そこだけ人の体の血管のように赤く光っていたバイパスに、
どうしてものりたいと思ったことも、そして結局最後までのれなかったことも

進まない車の列の中で、携帯の繋がらない母に、一瞬覚悟を決めたことも

4時間半かかってやっとたどり着いた自宅の庭で、母が梅の木にすがっていたことも

そんな母の第一声が「こんな時間までいったい何してたの?」だったことも

車の中で一晩中見ていた夜空の星が、本当にきれいだったことも

その夜空が、時々赤く染まるのを、不思議に思って見ていたことも

朝になって見た家の中の惨状に、涙も出ず、なぜか大声で笑ってしまったことも


全部 全部 昨日のことのように覚えているのです。


今年の3月11日は、祈りの一日になりました。


被害にあった人たちの、やり場のない悲しみに触れる度、
癒えることのない苦しみに触れる度、ただただ涙する 鎮魂の一日になりました。

今回 命が残ったことは、本当は奇跡だと思うのです。
津波の被害があった海岸線は、両親の故郷でしたし、
客人が来仙すれば、海の幸を食べに案内したのは、きまって海沿いのお店でしたから

たまたまあの日あの時、そこにいなかっただけなのです。
残された命だと あらためてそう思うのです。


だから私は、これからの時間を、大切に生きようと思うのです。

自分の心が自然に、素直に動くことを、大事にしようと思うのです。

残された時間を、悔いのないように、恥じることのないように、
自分の気持ちに耳を澄ませて、できるだけ正直に生きようと思うのです。


これが、あの日から1年経った今思う、偽りのない気持ちです。


皆さんにとって、この一年はどんな一年でしたか?
そして今皆さんは、何を思いますか?