朗読ボランティア 「杜の音通信」 (H29年12月号)

  
長野淳子 [posted:2017.12.20]

平成26年の9月から、月1回のペースで朗読ボランティアに伺っている 「ギャラリー杜の音」
12月は、以下の4作品を朗読しました。


① 佐藤 愛子:作 「九十歳。何がめでたい」 より 「老残の悪夢」
② 児玉 辰春 :作 「よっちゃんのビー玉」
③ シルヴィ・ネーマン :作 「水曜日の本屋さん」
④ 矢野 竜広 :作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」


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① 佐藤 愛子:作 「九十歳。何がめでたい」 より 「老残の悪夢」   (朗読:八幡 靖子さん)


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大正12年生まれ、現在93歳の大作家 佐藤愛子の最新エッセイ集。
『九十歳。何がめでたい』 というタイトルには、ご本人曰く 「ヤケクソが籠っています」。


佐藤さんは2014年、長い作家生活の集大成として 『晩鐘』 を書き上げました。
その時のインタビューでこう語っています。
「書くべきことは書きつくして、もう空っぽになりました。作家としての私は、これで幕が下りたんです」


その一度は下ろした幕を再び上げて始まった連載 『九十歳。何がめでたい』 は、佐藤節が全開。
自分の身体に次々に起こる 「故障」 を嘆き、時代の 「進歩」 を怒り、悩める年若い人たちを叱りながらも、あたたかく鼓舞しています。


艱難辛苦を乗り越えて生きて来た佐藤さんだからからこそ書ける緩急織り交ぜた文章は、
人生をたくましく生きるための 「金言」 も詰まっていて、大笑いした後に深い余韻が残ります。
 

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今回は八幡さんが、自分自身と重なる部分もあるのか、半ばやけくそ気味に表現してくれました。
杜の音の皆さんも 「ウンウン」 と、しきりにうなずきながら聞いて下さいました。


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② 児玉 辰春 :作 「よっちゃんのビー玉」  (朗読:田中 憲子さん)


よっちゃんのビー玉.jpg


広島に落とされた原爆でよっちゃんはなくなりました。「ビー玉がきれいじゃねえ」 ということばを残して。
ビー玉は兵隊にいったおにいさんが、よっちゃんのために見つけてきてくれたものでした...。
ビー玉に秘められた戦争の悲しみを描く絵本です。


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世の中がなんだかきな臭い昨今、唯一の被爆国としてあらためて警鐘を鳴らしたい。
そんな思いを込めて、田中さんが読んでくれました。杜の音の皆さんも、じっくりと聞き入って下さいました。


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③ シルヴィ・ネーマン :作 「水曜日の本屋さん」   (朗読:堀 多佳子さん)


水曜日の本屋さん.jpg


あのおじいさん、いつも戦争の本を読んでいるけれど、どうしてそんな本を読むの......? 
フランスの街角の小さな本屋さんを舞台に、本が介する少女と老紳士との心の交流を描いた絵本。
少女の豊かな感受性が胸を打つ感動作です。


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女の子とおじいさんは水曜日に本屋で出くわします。
おじいさんはいつも決まって戦争の本を読んでいます。


ある日その本が売れてしまったと聞いて
「おじいさんは、大きな袋をしょわされたように背中をまるめた」


そしてその本がおじいさんへのクリスマスプレゼントだったとわかった時
「おじいさんは軽々と包みをかかえて帰っていった」


こんな表現で人物の気持ちを表しているところが、何とも素敵な作品です。


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今回は堀さんが、女の子の素直な視線を優しく読んでくれました。
杜の音の皆さんも、優しい眼差しで聞き入っていました。


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④ 矢野 竜広 作 「そこに日常があった。」 より 「当たり前のこと」 (朗読:全員で)


「太陽がのぼること」 で始まるこの詩は、
「当たり前に思えてしまうこと その一つ一つが 本当は奇跡」 という内容で、
ステージ・アップの朗読会でいつも最後に、参加者全員で読んでいる詩です。


そこに日常があった。.jpg


「杜の音」 でも、いつも結びに全員で、音楽にのせて読みます。
「この詩のコピーを部屋の壁に貼っています」 という方もいて
「毎回この詩を朗読するのが楽しみです」 とおっしゃって下さいました。


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毎回、作品選びに始まって、登場人物の配役やBGMなど、「読む人」 も 「聞く人」 もお互いに楽しめるように、工夫していますが
読んでいる間の 皆さんからの 「笑い声」 や、読み終わった後の 「拍手」 「楽しかった」 の声が 「朗読して良かった~」 と思う瞬間です。
そうした声を励みにして、これからも 「朗読ボランティア」 を続けていきたいと思っています。


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