「放送禁止用語」 と 「差別用語」 について

テレビ番組などで、CM明けや番組の終了間際に、
「番組放送中に、不適切な発言がありましたので、お詫びいたします」
というコメントが出されることがあります。


これは、番組放送中に出演者が、いわゆる 「放送禁止用語」 を使ってしまったための 「お詫び」 で、
時には 「先週の番組放送中に・・・」 と言われ、「先週いったい何を言ったの?」 と
妙に気になってしまうこともあります。

◆ 「放送禁止用語」 とは

「放送禁止用語」 といわれるものは、テレビやラジオといったマスメディアにおいて、
何らかの理由で 「差別用語として使用が禁止されている言葉」 を指すもので、
決して法によって明文化されたものではなく、「放送事業者の自主規制」 によるものです。 

◆ 「放送禁止用語」 の例と その理由と言い換えた言葉

★「お灸を据える」 ⇒ 東京都はりきゅう・あん摩指圧師会からの要請で ⇒ 「お仕置き」 「制裁」
★「将棋倒しになる」 ⇒ 将棋連盟からの申し入れにより ⇒ 「折り重なるように倒れる」
★「父兄」 ⇒ 男女差別につながるという理由で ⇒ 「父母」 「保護者」
★「土方」 ⇒ 職業的差別につながるという理由で ⇒ 「建設作業員」 「建設労働者」
★「しりぬぐい」 ⇒ 不快感を与えるという理由から ⇒ 「後始末」
★「めくらめっぽう」 ⇒ 視覚障害のある人に配慮して ⇒ 「やみくもに」 「手当たり次第」
★「つんぼさじき」 ⇒ 聴覚障害のある人に配慮して ⇒ 「かやの外」 「仲間外れ」


「将棋倒し」 がダメなら、本来倒すことが目的の 「ドミノ倒し」 ならいいのかしら?
などと突っ込みを入れるのは、いささか不謹慎だと思いますが、
ちなみに、「玉突き事故」 という言葉に対して、「日本ビリヤード協会」 は、
「特に差別用語としての使用禁止を求めない」 という見解を示しているそうです。

◆ 「差別用語」 への対応

確かに、身体の不自由な人や社会的弱者を侮蔑したり蔑んだりする言葉は、
人間として許されるものではありません。
また、時代と共に変化していく言葉の中には、現代において適切でない言葉も少なからずあると思います。


こうしたことに、メディア関係者は敏感になりすぎているきらいがあり、
以前、昔の映画がテレビで放映された時、セリフにいわゆる 「差別用語」 があったのでしょう。
そのセリフの声が消され 「クチパク」 になっていたのを見て、びっくりしたことがありました。


いくらなんでもそれはやり過ぎということで、現在では、放送の最後に
「作品の中に、現代において不適切な言葉がありましたが、
作品の内容を尊重するため、そのまま放送しました。ご了承下さい」
といったテロップが出されるようになりました。

◆ 「言葉」 には 「語源」 がある

例えば 「つんぼ桟敷」 という言葉は、
歌舞伎の二階桟敷の一番奥で、舞台の役者の声がよく聞こえない場所のことを言い、
「声が聞こえない桟敷」 から 「つんぼ桟敷」 という言葉が生まれたと言われています。


「言葉」 にはそれぞれに 「語源」 があり、それを知る事で歴史が見えてくることもあります。
ですから、それらの言葉を、安易に 「差別用語」 と言う言葉でひとくくりにして、
使用を禁じることに対しては、少なからず疑問をもちます。

◆ 大切なのは 「様々な立場の人への思いやり」

要は 「用語」 の問題ではなく 「対応」 の問題だということです。
つまり、「様々な立場の人」 に対する 「思いやり」 が大切だということです。


そう言った点から見れば、人種や宗教、性別、性的指向などに対する、憎悪に基づく差別的な言動の
「ヘイトスピーチ」 の方が、はるかに 「差別用語」 といえるのではないかと思います。


もちろん、不特定多数の人が見る 「番組」 と、街頭での 「ヘイトスピーチ」 とでは違いがあると思いますが
それこそ 「様々な立場の人への思いやり」 の面から言えば、どちらも同じではないかと思うのですが
皆さんは、どう思いますか?


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